仕事術

モンスターペアレントかもと思った時に参考にする保護者対応の方法

hana

「モンスターペアレント」という言葉、先生になりたいと考えたことがある人なら聞いたことがあるはず。今回は、いわゆるモンスターペアレントと言われるような保護者の方についてと、私なりの対応について書いてみたいと思います。

まず結論としては、とにかく火をつけないように、絶対に否定しないように、相手の意見をひたすら傾聴する、というのがベストであることが多いです。

モンスターペアレントとは

「モンスターペアレント」という言葉自体は、ニュースなどでも耳にするので、一般の人にも浸透している言葉だと思います。

一応、ウィキペディアによると、

モンスターペアレント(Monster parent)またはモンスターペアレンツとは、学校などに対して自己中心的かつ理不尽とされる要求をする親を意味する。元小学校教諭の向山洋一が命名した造語(和製英語)。略してモンペアモンペともいう。

となっています。

最近は教育現場に限らず、モンスターカスタマーなど、企業などでも理不尽な要求をする人に対して「モンスター」という言葉が使われています。

一方で、モンスターという言葉を使うのは、こちらが最初から拒否する気持ちが含まれるので、教員としてはあり得ないというような意見を聞いたことがあります。言葉にすると願いが叶うの逆バージョンで、モンスターと言っていると自分を洗脳しているようなものだから、余計に拒否反応が出てしまうよ、ということですね。

個人的には、言い方は何でもいいと思いますが、もはや悪意があるのではという、業務を妨害してくるような行動をされる保護者の方がいるのは事実です。

その比率は、学校の種別、公立か私立か、また地域などによって異なりますが、公立学校だとそのような保護者の方に出会う方が確率としては大きいです。

担任として出会わなくても、教科の成績に対するご意見、たまたま当たった電話対応に対するご意見、廊下ですれ違った時の態度についてなど、え、そんなことまで⁉︎ということは多いです。

そして、モンスターと言われる所以の1つだと思いますが、このような保護者の方は、だいたいの場合、主張が激しい、つまり攻撃性が高い場合が多いです。

社会人経験がなく、初任でこのような方に出会うと、心が折れてしまう可能性があります。初任でなくとも、転勤してこのような保護者に当たって病気休暇を取得される先生も少なからずいらっしゃいます。

個人的に感じたコツが

絶対にやってはいけないモンスターペアレントへの対応

やってはいけないこと、それは、保護者の方の意見に反論することです。

正解は1つではないですが、自分の経験、および様々な先生方を見ていて思ったことは、こちらが100%正しい場合ですら、保護者の方の意見に対して、こちらから意見を申し上げて決していいことはないということです。

保護者の方のご意見が小さな火種だとすると、教員側の意見は油です。

だいたい、度を超えた意見をしている時点で、常識とか理論を超えた感情論の世界に入っています。

一般的に、先生になる方は真面目なので、真面目に理論的に話そうとしますが、それが通じる世界ではありません。

例えば、会話をしているだけでお酒の匂いがしてくるような方を相手に、いくら理論的なことを言ったとしても、理解されることはありません。

酔っ払っていなくても、そもそも常識の基準が違うので、いくら話しても理論が噛み合わないことがほとんどです。

理不尽なことを言われたら言い返したくなる気持ちはわかりますが、真面目で論理的な言葉を返すほど、こちらが消耗するだけなので、やめましょう。

どう対応するのがいいか

ではどうするのが良いか、以下が私が思うポイントです。

  1. 学校の電話を使う(先生個人の携帯は絶対ダメ)。
  2. 同じ土俵には乗らない。常に客観的な視点をもつ。
  3. 管理職や学年の先生に常に報告と相談をする。
  4. 常にこちらが下手(したて)になって、ひたすら傾聴する。
  5. 絶対に否定しない。
  6. 優しい声、トーンで話しつつ、仕事はできる先生というイメージを作る。
  7. 相手の心配していることに共感する。
  8. 子どもの学校での様子を褒める。
  9. こちらからの提案は、お子さんのためにこうしたらどうかと柔らかく伝える。

多いですね。

まず、①〜③は保護者対応そのものというより、保護者対応するための環境整備という感じでしょうか。そして④〜⑨が、実際に保護者の方と対話するときの実践編です。1つずつ解説します。

①学校の電話を使う

これは、当たり前だろうと思われると思います。普段、学校にいるときはもちろん学校の電話を使いますよね。問題は、勤務時間外に連絡が必要となった場合です。

本来、こういう案件は無くなるように教育委員会が環境整備するべきですが、実際には、仕事があるから退勤時間後に連絡してくれとか、こちらから緊急で連絡せざるを得ないという場合が出てくることがあります。

このような場合に、自分の携帯電話や家の電話からかけてしまうと、その後何かある度にずっと電話がかかってきてしまっている、という先生がいらっしゃいました。

私も退勤後に電話をする必要が生じたとき、その先生から絶対に自分の携帯を使ってはダメとアドバイスされました。

中には仕事用と割り切って携帯電話の回線を2つ契約している先生もいらっしゃいましたが、私は回線が1つしかなかったので、学年主任にも相談して、結局、公衆電話からかけました。

そのときは、十円玉を用意して電話をしたら、数分では話が終わらず、結局1度電話を切ってから、コンビニでテレホンカードを買いました。その費用を自分で支払ったのはおかしいと今でも思いますが、この時代でもコンビニでテレホンカードが変えるんだということに驚いたのを覚えています。

とにかく、依存体質の方の場合、何かある度に電話がかかり続けてしまうので、退勤後に電話の必要が生じたとしても、自分の携帯を使うのはやめましょう。

②同じ土俵には乗らない、でも同じ目線で。常に客観的な視点をもつ。

これは、初任者研修で言われた言葉で、私が唯一覚えていて、実際に役立ったと思うことです。抽象的ですが、保護者と自分が違う土俵、または違う星にいて、その星ごとふわふわと同じ目線の高さに合わせるというイメージです。

このイメージを持っておくと、何を言われても客観的に状況を評価できるようになります。また、⑦で後述する共感のところに通じますが、客観的な見方をしつつ、相手の目線に合わせた対応ができるようになります。

学校には、攻撃的な言葉や人格を否定するような言葉を四方八方へ飛ばしている保護者の方もいらっしゃるのですが、そのような言葉をいちいち真に受けていては、こちらの精神状態がおかしくなりかねません。

私は、へーこういうことを言う人もいるんだ、というふうにどこか他人事のような視点を持つことで、常に冷静にいられた気がします。

余裕があれば、保護者の方も、(学校の対応関係なく、その本人の周りの環境など)さまざまな事情があってそのような攻撃的な言葉を発するに至っているので、まあ、いろいろあってこの人も大変なんだろうな、という気持ちになるのもいいと思います。ただ、いろいろな事情を理解しようとすると沼なので、そこは深入りしなくていいです。

また、1対1でのコミュニケーションと考えるとしんどいですが、保護者の方への対応という1つのタスクとして考えると、腰は重いですが良い意味で機械的に対応できると思います。

イラッとして反応したり、どうしてそんなことを言うの、と悲観的に考えてはいけません。とにかく、考えずに右から左へ流す、というのが一番です。

③管理職や学年の先生に常に報告と相談をする

モンスターペアレントへの対応に限ったことではないですが、周りの先生方への報告と相談は常にしておきましょう。

報告というほどかしこまった感じではなく、職員室の雑談の中でも、こんなことがあったんですよ、と共有するような感じでもいいので、常に自分の状況を説明しておきましょう。

そうすると、それはおかしいよね、とこちらのことを認めてくれたり、大変だったねと言ってくれたり、精神的に落ち着けることが多いと思います。

また、それはこうするといいよとか、それはもう管理職の仕事だからいいよ、など実際に助けてくださることもあります。

また、心配症な保護者の方は、先生と話す機会があれば、ここぞとばかりにたくさんお話ししたいことがあって、先生を捕まえたら1時間なんてあっという間ということは珍しくないです。

私は、面談などの予定を組んでいて、あらかじめわかっている場合には、学年主任や周りの先生に、何時から面談なので、〇〇分しても戻ってこなかったら呼びにきてくださいとお願いしていました。そうすると時間になると、〇〇先生、お電話です、というふうに呼んでくれます。

④子どもの学校での様子を褒める。

電話や対面で対応するとき、どのような話をするにせよ、挨拶の延長として、子どもの様子を褒めましょう。

いや、褒めることないと思われる場合もあるかもしれませんが、具体的なことが思いつかない場合には、「〇〇さん、最近ほんとに頑張ってますよ」(←何をとは言わない)という漠然とした言葉でOKです。

この一言で、先生はうちの子を見てくれているんだなという意識と、認めてくれているんだなという少しの安心感を与えられます。

褒める言葉は、少なくともマイナスに働くことはないので、とりあえず褒めておきましょう。ポジティブな言葉は、その後のコミュニケーションや雰囲気にも良い効果をもたらします。

⑤常にこちらが下手(したて)になって、ひたすら傾聴する

攻撃的な人のうち、一定数は話を聞いてもらえれば落ち着くという人がいます。

特に、保護者の方だと、根本にあるのは自分の子どもを心配する気持ちだったりします。

その場合であれば、ひとまず話を聞いてもらえれば落ち着くことが多いです。とにかく相手を否定せず、適度な相槌を打ちながら話を聞きましょう。

このとき、基本的には何も考えず右から左に流すつもりで話を聞いてOKですが、相槌だけは打つようにしましょう。こちらが黙ったままだと、たまに、本当に聞いているのか⁉︎と怒りに火がついてしまうことがあるからです。

⑥絶対に否定しない

次のポイントは、絶対に否定しないです。

クレームとも思われる電話を受けていると、どうしてもそんなことはないと否定したくなる気持ちはわかります。

しかし、否定してもいいことはありません。というより、むしろよりヒートアップして炎上してしまう可能性があります。

まずは、「はい」「うんうん」という相槌や、「そうですよね」「心配ですよね」というように相手を認める言葉を返しましょう。

こうすることで、相手も私の話を聞いてくれたんだなと思って落ち着いてくることが多いです。

また、一度対立してしまうと、今後も最初から喧嘩腰で話が始まったりする一方で、受け入れる形で話を聞くことができれば、相手も少しは柔らかくなってくることもありました。

さらに、ヒートアップしている時は、もはや理性が働いていないときなので、こちらが理路整然と正論を述べても、文字通りには通じないです。

そしてこれは公立学校で勤務して初めて経験したことですが、そもそも説明を理解できない(いわゆる日本語が通じない)状態や、教員側と常識が違うので、話が通じないということが結構あります。

否定して正論を述べても、こちらが消耗するだけなので、やめましょう。

⑦優しい声・トーンで話しつつ、仕事はできる先生というイメージを作る

これも相手を受け入れることに通じます。

特に中学校で多いのかもしれませんが、学校というのは、独特の文化です。正直言って、今の時代に合わないなと思うこともあります。(個人的には、体育での行進など怖いと思ってしまいます…)

保護者の方の中にも、学校の文化に馴染めないな、と思う方はいらっしゃいます。

そのため、優しい声やトーンで話すというのは、いわゆるモンスターペアレントと呼ばれる保護者への対応だけでなく、すべての保護者に対して心掛けていました。

ただし、優しくかつキビキビ仕事ができる感じでというのがポイントです。ちょっと難しいですね。

話し方だけを取り上げると難しいのですが、とにかく優しいけど仕事はできる人というイメージを作っていくことが理想です。

ではどうすれば仕事ができる人になれるのか?

それは、何事においても早期対応し、こまめに連絡・報告をすることです。

社会人として当たり前のことじゃないかと思われると思います。しかし、実際に教員でもその他の社会人でも、この当たり前の報連相ができない、または遅いという人は珍しくありません。

ここを当たり前にして、かつ行動を早くするだけで、仕事ができる人だなという印象になります。

これは普段の業務全般についてですが、保護者への電話対応であっても、先生の印象というのは伝わるものです。

⑧相手の心配していることに共感する

一般的な保護者はもちろん、モンスターペアレントと言われるようなクレームや要求の多い保護者でも、多くの場合、その根底には、自分の子供を心配する気持ちがあります。

④の常に下手になるというのと似ていますが、子供のことや、保護者が訴えていることに対して「うんうん、心配ですよね」というように、共感を言葉に出すだけで、相手の態度も少しづつ柔らかくなります。

優しい雰囲気や相手のことを心配しているという気持ちが伝われば、炎上するということはありません。

ただし、同じ目線に合わせるというのは大切です。具体的には、「担任の私としても心配していて」とか、「お母さまはもっと心配ですよね」というふうに相手の大変さを認めつつ、自分も心配しているというのが伝えられれば理想的です。

上から言われていると感じる言い方や、強い口調はそれだけで生理的に無理と拒否されかねないので避けましょう。

⑨こちらからの提案は、お子さんのためにこうしたらどうかと柔らかく伝える。

学校生活において、また進路など様々な場面で、こちらから提案をしたいという場面があります。

しかし担任をしていると、全ての保護者がこちらの提案を素直に聞いてくれるということはなく、率直に要件を伝えたらお怒りになるのではないか、とこちらがビクビクしてしまうシーンがあるのも事実です。

そのような場合に私が心がけていたのは、「〇〇さん(=子ども)のことを考えると【提案】もいいかな(選択肢の一つかな)と思うのですが、どうでしょうか?」とすごく控えめに聞くことです。

とにかく、押し付けるのではなくて、子どものことを考えて、1つの選択肢を提示するという控えめなスタンスでいきます。

結果としてこちらの思うような選択にならなかったとしても、結局は子どもの責任を持つのは親なので、あまり追及しすぎないようにしましょう。

まとめ

保護者対応は、本当にいろいろなパターンがあるので、ここに書いたこと全てがうまくいくとは限らないかもしれません。

本来は、周りの先生方を観察しながら、自分でも経験を積みながら慣れて、試行錯誤するというのが一番です。

でも、初めて担任になったり、初めて保護者と対応する際は、本当にどうしていいかわからないのにいきなり実践ということがあり得ます。

そんなとき、上記のポイントは1つの指標にはなるはずです。

これらが少しでも先生方のお役に立てば嬉しいです。

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はな
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東京都の期限付任用教員を経て、正規採用で中学校の教員となる。初年度から中学校の学級担任と家庭科を担当。
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